GARDEN -world view- / Sugito Tatsuki
柔らかな光が木々の緑を透かし、木陰は心地良い。
草の香りを運ぶ穏やかな風が葉を揺らし、芝に落ちるシルエットを絶えず緩やかに変化させる。
新しい空気が、胸の底までさらって過ぎる。
彼の僅かな重みと、温かさが、もたれさせた肩から伝わる。
そよ風は彼の髪を軽やかに撫ぜ、肌をすべる。
軽く閉じた瞼は、彼の穏やかな眠りにあることを伝える。
意識は夢にあっても、彼は確かに隣にいる。
もう目覚めないなんて、目を開けて欲しいなんて、不安になったりはしない。
ただ愛しい。
彼を起こしてしまわないよう、クローバーの上に手をつき、
そっと身体を動かして、頬に触れた。
髪を梳いて、
頭を包み込んだ。
片手では足りなくて、いよいよ姿勢を動かすと、彼を肩から胸にもたれさせて、
自由な両手で、大事に抱き締めた。
そうしたら見えなくなってしまうのが残念だけれど、それよりも彼をもっと感じていたくて、
その肩に顔を埋めると、目を閉じた。
儚い彼の重さが、
鼓動が、
呼吸が、
体温が、
腕の中にあった。
とても安らいで、ゆっくりと息を吐いた。
頬を寄せて、
指を絡めて、
あたたかくて、
うとうととして、
一緒に眠ろうと思った。
二人だけだ。
ここでは、何も変わらないし、何も起こらない。
だから、安心して、満ち足りた思いで、眠ろう。
ずっと眺めていたい、あなたを目の前にして眠ってしまうなんて、どれほどに贅沢なことだろう。
瞼を閉じる瞬間にも、また開いた時にも、あなたはここにいる。
僕のものなのだ。
なんという喜びだろう!
楽園の庭で、穏やかな時を、眠ろう。
四つに分かれた川のせせらぎに守られて、
美しい実を結ぶ樹々に抱かれて、
草原をわたる風に包まれて、
高い青空の下で、
あなただけ見つめて、
眠ろう。
地に伏し、薄れゆく意識で、土煙に覆われ轟音を立てる世界を遠くに感じながら、ジョミーは、こんな存在しなかった人工楽園のセンチメンタルな情景を思い描いている自分を嘲笑った。
塵から生まれた、僕たちは皆、だから、塵へ戻るだけだ。
灰から生まれたから灰へ、しかして魂は魂へと還る。
僕はあなたへ還る。
あなたと共に、あの楽園へ。
約束の地へ。
かつて生まれた場所へ。
遠く、更に遠く。
明日よりも、もっと遠くへ。
還ろう。
地球へ!
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『単純摂食効果』収録『GARDEN-preview-』に、最終回を踏まえて後半を追記しました。
彼は最期に何を見ただろう。
2007.09.22(preview:2007.09.16)