ヘイトクライム + / Sugito Tatsuki
あなたが誰にも知られているのが嫌だ。
誰もがあなたを知っているだけで、
誰かがあなたを語るだけで、
ひどく苛立たしい。
あなたが僕の内だけでないところにいるのが嫌なのだ。
あなたは僕にとってだけ、あれば良い。
僕があなたを全て知る者であれば良い。
そうでないのは嫌だ。
僕のものなのだ。
どうして他の者達に分け与えなくてはいけない?
あなたが僕の手を離れ、
無遠慮に触れられ探られ知られ汚されるのを、どうして指をくわえて見ていられる?
あなたが僕しか知らないというのでは不十分だ。
あなたを知るのが僕だけでなくてはいけない。
そうして初めて、本当に欲しかった、あなたと僕との確かな関係性が成立するのだ。
こんなあなたは、今まで誰にも知られていない。
だから、もっと知りたい。
その、内奥へ。
僕は、あなた自身すら知り得ない、あなたを知る。
◇ ◇ ◇
あなたに手を伸ばし、両手で頭を支える。
焦点が合わないほどに至近距離で見つめれば、思わず吐く溜息は、既に情動の熱を孕んでいる。
唇に、触れた。
指の腹で、そのかたちを繰り返しなぞると、適度な弾力が心地良い。
暫しその感覚に酔う。
それから指を曲げて、くわえさせるように押しつけた。
顎を押し下げて、僅かに入り口を開いた内奥へ、指をねじ込む。
はじめは2本、温かく、柔らかで、なめらかな表層を持つ、その内壁を、
たどってなぞる。指を曲げ、軽く引掻いて、物足りずに本数を増やして掻き回す。
思いの行くまで存分に蹂躙して、更に奥へ奥へと侵入する。
喉の奥まで探り尽くす目的で、指を伸ばす。
そして、指先で見出した、舌を挟み込んだ。
奥へ落ち込んだその柔らかな肉を、引きずり上げる。
摘み、弾力をみて、ざらついた感触を何度もなぞる、その度に、末端より生起する甘美な刺激が背筋を伝い走る。
惜しみつつもそれを解放したのは、無理な角度で動かしていた指の関節に疲弊をおぼえたからだ。
ずるりと生々しく音を立てて引き抜いた、その指を、そのまま己の口に含む。
愛しく舌を絡め、丁寧になめ上げ、すすり、互いの入り混じった唾液を嚥下する。
陶然として目を閉じて、指を吸い、あるいは歯を立てる。
そのまま、自らの内を探り、刺激を与え、なぞっていけば、勝手にこみ上げる熱を抑える術はない。
堪らなくなって、己をかき抱いた。
荒い息を吐きながら、潤んで歪む視界に捉えた、きれいな首を、包み、すがるように抱きしめる。
あなただけだ。
あなたしかいない。
ずっと我慢して、
隠して、
堪えて、
抑圧して、
情動も、涙も溢れぬよう、自ら手をかけた、
指が震えるまで強く、力を込めて圧迫した、己の首はもう、
喉が潰れるほどに痛くて、声を失うだろう。
あなたは、僕のそんな指をそっと包み込んで、
頸部に絡んだ手の強張りを解きほぐし、優しく外してくれる。
あなたはどこまでも受け容れ、赦して、解放して、僕を泣かせてくれる。
過敏な神経が食い荒らして、掻きむしられた、この精神を宥め、休ませ、癒してくれる。
僕を安らぎの内に眠らせてくれる。
僕は、また生きようと思う。
あなたのために。
待っていてください。
僕が、あなたを助けます。
きっと、
だから、
もう少しだけ、
待っていて欲しい。
もう少しだから。
分かっている、
あと、もう少しなのだ。
そうしたらすぐに、もう一度あなたと出逢い、
もう二度と失くさない。
僕は、あなたをひとりにしない。
あなたを決して、ひとりにしない!
End.
サロメジョミーの流れで、なにがなにやらおまけポエム。お持ち帰りの例のモノは多分ミュウ技術を結集して新鮮な状態で保管されるので大丈夫です。
2007.09.20
|