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ただのハレブル四重奏 / Sugito Tatsuki







※ところにより下世話な悪ふざけです。ご了承ください。
上から順にお読み頂けると幸いです。








0.分類

ただのハレブル/掌編/最中



1.センチメンタル風

蒼い薄闇は、いつも通りだった。 静謐な空間もいつも通りだったし、水路も、寝台も、その上に重なる二つの影も、いつも通りだった。
優美な装飾の施されたソルジャー・ブルーの衣装を、ハーレイの指は淡々と開いて、さらけだされた白い胸を機械的な動作で撫でるのだった。

おもむろに口を開いたハーレイは、矢張り情感の籠らぬ声で淡々と問うた。

「ラボラトリでは、何人を相手に? 頻度は? どれだけの開発を重ねて、その身体に?」

ブルーは気だるげに寝台に仰向けたまま、身じろぎもせず、目だけを上げた。鮮やかな双眸が、不躾な問いを為したハーレイを胡乱に見遣る。可憐な唇が開いて、発せられた声は冷ややかだった。

「そんなことを、知りたいのか。それは純粋な好奇心で?」

ハーレイはブルーの上体を抱き起こす。片手で背を支え、もう片手で衣装を掴み、薄い肩から落として袖を抜かせる。あらわになったブルーの腕はいよいよ細い。関節のかたちが、透けそうに滑らかな皮膚を通して容易に見てとれて、繊細な骨格が頼りない。
肩を掴んで再び寝台に押しつけ、ハーレイはブルーの首筋に顔を埋めた。くぐもった声で囁く。

「使い古しの、それも何人もの使い捨てた、あなたを抱けと強いられているのです。嫌々ながら従わざるを得ない哀れな部下に、あなたは対価を支払わなくては」

語る間にも、耳元に、あるいは喉に、鎖骨に、口づけを落として舌を這わせる。肌を伝う生温い感触に、特に感じ入った様子もなく、ブルーは応える。

「実験スケジュールは7日につき2日の定比率で進行」

「標準的だ。新たな行動を獲得させるには理想の」

薄い身体を伝い下りたハーレイの唇は、胸の赤い先端に至っている。一方は指先で気紛れに弄び、もう一方は口に含んで転がす。
教科書通りの愛撫に、ブルーから、特に反応といえる反応は返ってこない。しかし、ハーレイの気のせいではなく、指や舌先に感じる硬度は僅かに増したようだった。
ふと、溜息を吐くと、ブルーは目を伏せて呟く。

「それ以外の時間の全てだ」

「え?」

ハーレイは思わず顔を上げて聞き直した。ブルーは軽く目を閉じたまま、書面を読み上げるように言葉を紡ぐ。

「7日に2日の実験、それ以外の全ての時間は、実験者が鬱屈を晴らすのに使う、若しくは使いやすいように学習を施すためにあった――行為は最低で7日に3日、一度につき少なくとも3人に」

ハーレイは何も言わなかった。自分が聞いたことの答えが与えられたけれど、何も言わず、黙々と愛撫を再開した。



一体、自分たちはどこへ行こうというのだろうか。ハーレイはぼんやりと思った。
ブルーを、彼の望むささやかな充足へ、連れて行けるのか、ハーレイは自信がない。
それでは、互いにとって、これは何なのだろうか。
思考は進まなくとも、行為は滞りなく進行していく。
仄かに熱を抱き始めた、ブルーの情動の中心へと、ハーレイは手順に沿って触れていった。



二本の指で解きほぐした秘所に、ハーレイは己の昂りを押し当てた。大きく開かせた脚を抱え直す。

「あなたは、――確か言って――メロディ?」

「メ・ロ・ディア」

こんな時に、また昔の話を持ち出すハーレイの無粋を咎めることもなく、ブルーは躊躇う様子もなしにそれを口にした。
納得を得たように頷くと、きつい入り口を押し広げて、ハーレイはブルーの内に己を沈めていく。

「欲しいと。入れてくれと、ねだるのですね」

挿入の間、息を詰めて受け容れねばならないブルーは、すぐに応えることは出来ない。それを知っての問いかけだった。
固く目を閉じて、ブルーは無言でハーレイの侵入に耐えきった。ようやく深く息を吐いて、掠れた低い声で応じる。

「そうしなくては終わらない」

言い終わらないうちから、天蓋の光が遮られ、シーツに散るブルーの髪の先までが、上体を前傾して低くしたハーレイの陰に入る。
あたかも獲物の喉元に喰らいつくかの如く、白い身体を押さえ込んで覆いかぶさる姿勢をとると、ハーレイは律動を開始した。
リズミカルに内奥を突き上げてやりながら、ハーレイは荒い息の合間に、なおも続けた。

「そうですか? 子どもの自制心など、誘惑の前にはあってなきもの。あなたも結局、悦んでいたのでしょう」

揺さぶられるままに身を任せ、突き上げられるに応じて反動で頼りない首を揺らす、ブルーにとってはぶつけられる肉も言葉も同様に受け流す対象らしい。
何ということもないといった風情で、ただし時折、こみ上げるものを抑えて煩わしげに、小さく息を詰まらせながら応える。

「ああ、そうだな。あの時以上、の烈し、……い感覚、は、……お前相手では到、底……、得られない、」

出し抜けに、ハーレイは投げ出されたブルーのか細い手首を掴むや、強引に指を絡めて固く握った。
もう片手は、ブルーの方からハーレイの腕を辿り、矢張り同様に互いの汗ばむ指を組み合わせる。

「あなたが鈍感になったからです」

「お前が下手だからだ」

繋げた部分で互いを縛り、熱と、鼓動と、感覚が、通い合って共鳴する。
後は両者の衝動が加速的に高まって、二人は達した。
吐き出された体液が、とろりと伝って、まるで互いを繋ぐ神経線維のようだった。



2.洋画字幕風

(ハーレイ)「研究室では、何人と? 頻度は? どれだけの練習で、その身体に?」
(ブルー)「そんなことを――知りたいのか、4文字のアレのことを? それは好奇心で?」
(ハーレイ)「中古品のご主人サマを抱かにゃならんのです、嫌々ながら。そうやって従わざるを得ない――哀れな部下に、あなたは対価を支払わなくては」
(ブルー)「実験スケジュールは7日につき2日。定比率で進行」
(ハーレイ)「標準的だ。新たな行動を獲得させるには――理想の」
(ブルー)「それ以外の時間、全てかもだ」
(ハーレイ)「え?」
(ブルー)「7日に2日の実験、それ以外の全ての時間は、実験者が鬱屈を晴らすため――若しくはあの白衣の人たちが使いやすいよう、シロネズミに学習させるために。最低で週3日制、担当3人」
(ハーレイ)「あなたは、かつてのローカルな惑星で――確か言って――メロディ?」
(ブルー)「メ・ロ・ディア」
(ハーレイ)「欲しいと。アレをアソコに入れてくれと、ねだる」
(ブルー)「終わらすためだ。言わなきゃ終わらない」
(ハーレイ)「そうですか? 我慢強くない子だ、結局のところ――悦んでいた」
(ブルー)「ああ、そうだな。最高に烈しかった。比べて、お前はせいぜい首輪付きのナキネズミだ」
(ハーレイ)「鈍感が!」
(ブルー)「この下手糞!」



3.それっぽい風

「淫乱な身体だ。もうこんなに蕩けて、ひくひくと行儀が悪い――ラボラトリでは、何人を咥え込んだんですか、所構わず、毎晩のように?」
「ひぅ…っ! あ、ぁん……そん、な…」
「ここが悦いんですね。おや、みるみる硬くなっていきますよ、分かりますか? それで、奴らの味はどうでした? 奉仕して差し上げるのだから、教えてくれても良いでしょう、それくらい」
「ん、う……っあ、実験、が、…週に2回で、……あァ!」
「なるほど、その時にお楽しみがあったわけですね。こういう風に可愛がってもらったと」
「ちがっ…! う、あぁ……、実験、の無い、間ずっと…、ひぁ、だめぇ…っ!」
「え?」
「やっ…、やめないで…! …実験が、無いといつも、何人もで……、恥ずかしいこと、口も、手も…させられたり、自分、で、……っう…、――3人くらいならまだいい、一日おきに、代わる代わる…、」
「メロディ――でしたか? あなたがもう我慢出来ずに腰を揺らして求めるときの合言葉は」
「…っあ、ふ……、メ、ろ…でぃ、……ア、ぁ…!」
「早く、大きいのが欲しい、強く突っ込んで、何度も抜き差しして揺すって、中に出してと、涙ながらに息喘いでおねだりするのですね」
「だっ…て、あぅ…! 言わない、と…ゆるして、もらえ、な…ぃ…、っあ、アア!」
「嘘ですね。下の口は余程正直ですよ、本当は嬉しくて待ち遠しくて堪らなかったのでしょう? こんなにも貪欲な身体だ、触って拓いてひどくして、犯して欲しくて仕方なかった筈です」
「あっ、ああ…! もっと、欲しい、あの時くらい、硬いの、入れて、突いて……!」
「とんだ色情狂だ、まだ足りないなんて、ここを使いすぎて麻痺しきってしまいましたか? 誰彼構わず身体を拓くから」
「あぅ、んう…! もっと、ぁあ、悦くして……!!」



4.童話風

もうずっとむかしむかしのことです。周りと違うから、という理由で捕まえられたブルーは、牢屋で悪い人たちからたくさんいじめられました。 それはそれはひどいことをされました。痛くて痛くて、ブルーはいつも辛くてたまらないのでした。
だいたい一週間に2日、連れて行かれる赤い部屋で、冷たい機械にねちねちといじめられます。ブルーはこの部屋が大嫌いでした。
赤い部屋に行かなくていい日でも、安心して眠ってはいられません。他の部屋に連れて行かれることもあります。 それは白い部屋で、ブルーはこの部屋が大嫌いでした。
何人もの悪い人たちにいじめられるからというだけではありません。痛くて苦しくて泣いてしまうからというだけでもありません。 ここでブルーは、見ている人たちの前で、僕は恥ずかしい子ですと言って、とても恥ずかしいことをしなくてはいけないのです。
そうしないとまたひどいことをされるので、ブルーは恥ずかしくて悲しくて堪らない気持ちを我慢して、悪い人たちの言う通りにするのでした。
悪い人たちは、ブルーが言いつけを守って、恥ずかしいことをやってみせると、皆で笑って喜びます。良い子だと言ってご褒美をくれます。
ブルーは悪い人たちのことは好きなわけがありませんでしたが、もらえるご褒美は好きでした。 もっとご褒美がほしいと思うと、恥ずかしいことをするのも平気になりました。それだけご褒美はおいしかったのです。 悪い人たちに、早くご褒美をちょうだいとおねだりするのも、恥ずかしくなくなりました。ブルーはそんな恥ずかしい自分が大嫌いでした。

それからずっとずっと後のことです。もうブルーは牢屋ではない、青い部屋にいます。ブルーはこの部屋が好きでも嫌いでもありません。
ここでブルーはハーレイにいじめられます。みんなブルーが頼んだことです。
いじめられると、ブルーは痛くて、辛くて、悲しくて、恥ずかしくなります。けれど、とても気持ち良くなります。 むかしむかしにもらった、あのご褒美を思い出して、気持ち良くなります。本当はご褒美の方がずっとおいしかった気がしますが、贅沢はいえません。 思い出というのはたいてい美化されるものですからね。だから、ブルーはハーレイが大好きです。




[ そんな四重奏。 ]
















折角の悪ふざけが許される日だから何か試みたいという思いが68%、そしてパスティーシュへの憧れが24%。 残りは何だかよく分からない衝動で出来ています。

2008.04.01


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