転生語『運命』 / Sugito Tatsuki
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「サッカーにはオフサイドなんてルールは不要だと思うんだ」
僕と並んで歩きながら、ジョミー(仮)は言った。本日昼過ぎ、平和な公園のベンチでのどかな読書タイムを満喫していた善良な市民に、十分な加速度をつけたサッカーボールをヒットさせるという、凶悪な行為を成し遂げた少年である。名前に(仮)などとついているのには、勿論わけがある。以下、回想モード。
サッカーボール襲撃事件をきっかけに、「君もやろうぜ!」という誘いを受け、僕は健全な青少年としてサッカーに興じた。ゲームが一段落した後、僕と彼は一対一の直接対決に闘志を燃え上がらせ、他の面々が呆れて散っていく中、全力で真剣勝負をしたのであった。その様子は正に青春の1ページといって過言ではないほどに輝かしかった。一騎当千、前人未到、映像化不可能ともいえる、宿命の戦いぶりだった。
血沸き肉躍る攻防の末、結局決着がつかぬまま夕刻となり、勝負はまたの機会にお預けとなった。夕映えのグラウンドは物悲しくも美しく、僕は心地良い疲労感と達成感でもって、沈みゆく太陽を仰いだ。眩しい太陽、爽やかな風にそよぐ木々、土と草の匂い。何と清々しいだろう。子どもは風の子、ツチノコ、元気の子とはよく言ったものだ。キノコタケノコスギノコなんて実に語感が良い。スギノコが何なのかは知らないが、春先に花粉を飛ばしたりするのだろう、多分。
グラウンドを出ると、僕たちは自然、二人で公園の出口まで続く並木道を一緒に歩くことになった。ボールを通じてすっかり打ち解けた僕たちであるが、実はまだそれほど言葉を交わしてはいない。サッカーに言葉は要らないのだ。ボールがあれば心は一つ。なんなら、ここからボールを奪い合いながらゴールたる公園出口を目指してもいいのだが、それはなかなかに殺伐としたノンバーバル・コミュニケーションとなりそうだ。
そういえば、まだ互いの名前も知らないと、思い至ったのは同時だったらしい。ここで彼は、「僕は、まあ、一応仮にジョミーでいいよ」と妙な自己紹介をした。
仮に?
偽名?
十代半ばの少年が?
不審に思う心が表情に出ていたのだろう、ジョミー(仮)は「君に教えるのはそれくらいでいいだろう。本当は名前だって言いたくないのに」と続けた。不服そうに。とても不満そうに。
あれ? 僕たち、ボールを介して心を通じ合わせたんじゃなかったか?
「ひどく嫌われているようだが、僕たちは初対面ではないだろうか」
「そうだよ。当たり前だ。最悪だ」
「それはむしろボールによる危害を加えられた僕の方こそが相応しい態度ではないだろうか」
「細かいなあ。あれくらいのこと、熾烈な近接戦闘に比べたら何でもないだろ。君の第一印象の最悪さと合わせて、差し引きゼロだ」
僕は慎ましく本を読んでいただけだ。何故そこまで言われなくてはならない。ピーター・パンに個人的な恨みでもあるのか? だとしたら八つ当たりもいいところだ。そうだよねウェンディ。
「読書はそんなに印象が悪いのか」
「人の顔を見て泣いただろ」
ああ、そちらの方か。確かに、いきなり泣き顔では初対面の印象としてよろしくない。ボールをぶつけられた痛みで涙目になっていたならまだしも、あれは明らかに、視界に入った相手を認識してから──だった。
いったい、その時僕の中でいかなる変化が生じたのか、自分でもよく分からない。その少年と相対した時、何かが胸の内から込み上げた。懐かしく、少し苦くて、痛い。自覚したら、どうしようもなく、涙をこぼすしかなかった。あの感情は何か、と問われれば困ってしまう。言葉以前の何かだった、としか言えない。
自分でさえ正体が分かっていないのだから、そんな状態を目にした彼の方も、わけが分からないと思っただろう。気分を害しても無理はない。ともかく非礼を詫びようと、僕は口を開いた。
「あれは、……」
「気持ち悪いよね」
さらりと言うジョミー。さくりと傷つく僕の心。
生まれて初めて、キモいって言われた……面と向かって言われた……あれおかしいな目の奥が再び熱いよマザー、もしかして今日は涙と共に試練を乗り越えて大人への一歩を踏み出す目覚めの日?
そんな記念的瞬間の衝撃を、僕が心身に行き渡らせている間にも、ジョミーは深々と溜息を吐いた。
「泣きたくなるのも分かるけど、いくら僕が溌剌とした天使のような近年稀に見る美少年とはいえ、そこまで感動されるとさすがに……」
「それは違う」
「そこまで欲情されるとさすがに……」
「もっと違う!」
溜息を吐きたいのはこちらの方だ。しかし、溜息を一つ吐くと幸せを一つ逃がしてしまうと聞く。こんなことで貴重な幸せを失っては一大事だ。我慢我慢。代わりに小さく愚痴を吐いた。
「……皆でサッカーしている間はフレンドリーだったのに」
「人々の前では理想的な公人モードさ。彼らに余計な不安を与えないように、パフォーマンスには留意しなくては。僕は指導者だからね」
指導者って何だ。
「おかげで『麗しき鬼軍曹』『金髪鬼(』『血塗れ鬼殺し(』なんて崇め奉られちゃってさあ、うん、よく分かる話だよ」
「いずれにせよ鬼なんだな」
「で、君は? 名前。なんだったら、特別に『お前』と呼んであげてもいいけど」
そんな特別は嫌だ。僕は、先の彼のやり方に倣って、「キースでいい」と名乗った。ジョミーが返したのは、僕の知るこういう場面での礼儀には程遠い、あからさまな舌打ちだった。
「気に喰わないな。何だその偉そうな物言い。お前なんか『お前』で十分だ。言っておくが、僕に声をかけて貰えるだけでも有難いことなんだからな。たとえ視界の隅を横切る虫けらにしても、一刹那ほど僕の注意を引くのに成功したとすれば、それは魂の重さに匹敵する功績だ。二階級特進ものだ。存分に感謝しろ。泣いて喜べ。跪いて奉仕しろ」
「…………」
鬼?
「いやだなあ、冗談さ。そんな顔しないでくれよ。まるで僕が君を困らせて楽しんでいるSみたいじゃないか」
むしろそれ以外の何だというのだ。僕の心の声をよそに、ジョミーは場違いなほど優しく微笑んだ。
「僕は君に何かして欲しいと思うほど関心を払っていないし、気の利いたリアクションなんてこれっぽちも期待していないから、気にしなくてもいいんだよ」
こいつは敵だ。ここに至って、僕は確信した。
あまり積極的な人づきあいは得意なほうではないが、それでも大抵の人間関係は問題なく処理することが出来ると自負する僕だ。敵意を向けず、向かせず、平静に。困ったさんや電波さんの適当なあしらい方も心得ている。
しかしこいつは、その僕を翻弄した挙句に言葉を失わせたのだ。只者ではない。目の前の少年に対して、かつてない戸惑いと危険信号を覚える。その意味で、彼の最初の「敵同士だったかも」発言は実に的を射ていたことになる。
自覚があるんじゃないか。最悪だ……。
この分だと、戦略的撤退も視野に入れた方が良いかも知れない。しかし無情なことに、グラウンドから公園出口までは長い一本道であり、どう頑張っても「あ、それじゃあ僕は右だからここで。さようなら」とはいかないのであった。こんなことならピーター・パンをベンチに置き忘れて来るのだった。残念ながら、かの本は現在僕の小脇に収まっている。他に忘れ物のネタに使えそうなものはない。なんならベンチを置き忘れてきたと言って戻るか? いや、それでは僕が公共のベンチに対して不当な所有権を主張することとなって具合が悪い。そもそも一人でベンチを運べるものかどうかも検証していない以上、賭けに出るのはあまりにリスクが大きい。その他、口実を色々と思い浮かべてみたが、どうも適当なものは見当たらなかった。
そうして、僕は穏やかでない心持ちで、ジョミーと仲良く並んでお喋りしながら、夕暮れの並木道を歩いている。
鬱な回想ここまで。微妙な空気で済ませた自己紹介の後、ジョミーはオフサイドの是非に関して一方的な熱弁を振るっている。僕が聞いていようといまいと構わないようで、たとえ上の空で聞き流そうと、心ここにあらずの回想シーンを続けようと、居眠りしようと、多分気付かれることはない。歩調を合わせて歩き続けてさえいれば。
まるで不誠実な態度に思われるかも知れないが、勿論、僕だって最初は歩み寄りの努力をしたのだ。その際の会話内容は以下の通り。
「……悪いが、僕、オフサイドについて、そんな熱く語れないんだが」
「出来るか出来ないかではない。やれ」
「いざ自分が言われてみると無茶な台詞だなあそれ!」
「なんてね。別にいいよ、黙ってて。愚民の意思なんて聞いてないから。君の立ち位置としてはロックンフラワーがいいところだ」
「うなずきんが良かったな、せめて!」
こうして僕は、発言権を封じられてしまった。……この状況は果たして、お喋りしていると言えるのだろうか。いや、確かにジョミーは何の支障もなく喋り続けているけれど……僕に関心がない、という先の発言をこうまで実践されると、その潔さにいっそ感心さえ覚える。
「オフサイドがルール化されることで、ゲームがより戦略的に複雑に面白くなるなんて、僕は認めない。ルールで決めて貰わなくては面白いプレイが出来ないサッカーなんてサッカーじゃない。腐敗しきったこの世界は真のサッカープレイヤーというものを失ってしまった」
サッカー界の今後を憂う深刻な口調で話すが、実のところ、先程のゲームでオフサイドを喰らったことを根に持っているだけだろう。いや、常日頃から、オフサイドについて個人的な鬱屈が溜まっているものとみえる。いつもホイッスルを鳴らされては、ゴールを無効化されているに違いない。
「サッカーっていうのは、もっと自由なんだよ。何ら制限に束縛されるものではない」
「ルールがなければ競技は成り立たないだろう」
ごく常識的な意見を口にしてみる僕。ジョミーは鼻で笑った。
「オフサイドがないくらいで崩壊するサッカーなど、所詮その程度だったということだ」
「なんだか格好いい台詞を吐かれた気がする!」
更にジョミーは語気を強めて続けた。
「凡人の基準に合わせたルールこそがサッカーを貶めている! こんなのサッカーじゃない! ルールを決めて、枠線を引いて、サッカーを捕縛しようとする陰謀だ! 僕は一人でも戦ってみせる!」
拳を握って熱く語る、その情熱だけは少し羨ましい。それほど大事なものがあるのは良いことだ。僕は小さな好意を抱いた。
ジョミーは真剣な面持ちで、ここからが重要なのだが、と声を潜めた。
「僕はかねがね、フィールドにラインは要らないと考えてきた」
「大変じゃないか」
フィールドが制限されていなければ、選手はどこまでもボールを追って駆けなくてはならず、移動距離の増加は疲弊をもたらす。そもそも固定フィールドがない無秩序なゲームなど成立しない。すると、分かっていないな、という風にジョミーは首を振った。
「いいか、例えば100メートル走という競技は日常場面と乖離しているだろう。学校に遅刻しそうになって走る時、スタートの合図は、ゴールラインはどこにある? 律儀に合図を待っていたら間違いなく遅刻する。フライングはこの場合、正当だ。同じように、日常場面でシュートを決めようとするとき、そこにラインはあるか? 目的を達成するためには、本来、いかなる手段をも講じるべきだろう。この地上の全てがフィールド、見渡す限り、どこまでも果てしなく広がる戦いの場……素晴らしい」
陶然とした瞳で何を語っているんだこいつ。見渡す限りの戦場が日常なんて嫌だ。正直なところ、僕はかなり引いていた。うなずきんとしての役目も果たせそうにない。
「ラインがないからといって何だ。ついて来れない奴は辞めてしまえ。選手は僕だけでもいいくらいだ」
「一人サッカー!? 『僕は一人でも戦ってみせる』ってそういう意味だったのか!」
「空中戦だってお手のものだ」
果たして、手の使用が禁じられたこのゲームにおいて、その表現は適切なのだろうか。いや、柔軟な発想でいけば、ボールを運ぶのに手を使ってはならないというのも妙なルールかも知れない。サッカーの基本概念を変容させることになるが──僕はふとした思いつきを口にしていた。
「……ああ、そうか。いかなる手段の制限もなくすというなら、ボールを蹴らずに抱えて走」
「ふざけるな! 神聖なボールを汚濁に塗れた不浄な両手で運ぶことなど許されない!」
怒鳴られた。良い提案をしたと思ったのだが。いいか、とジョミーは続けた。
「ボールというのは、丁寧に優しく転がしてやり、時に激しく、緩急をつけて上下左右に翻弄し、圧迫し、弾き、滑らかな肌に群がる何人もの猛者たちのテクニックによってあらゆる方向から代わる代わる刺激し、じっくりと高めてやりながら、ゴールという究極の甘美な絶頂へと導いてやることが男の務めだ」
「なんだか不健全っぽい!」
と、そういえば気になることがあった。いい機会だ、このサッカー狂に一つ質問してみるとしよう。
「サッカーというのは奇妙なゲームだが、その起源はどこにあるんだ?」
「へえ、リアル十代前半少年やっててサッカーの起源を知らないんだ。教養ないね」
どこかで誰かに言われた気がする言葉だ。癇に障るが、常識に欠けていることは事実なので、大人しく拝聴することにする。
「ラグビーは知っているだろ。一応それくらいの常識は期待してもいいよな。昔、某パブリック・スクールでラグビーの授業中、あまりに興奮したウィリアム少年が、これは反則なのだが、今で言うサッカーのドリブルのように、ボールを走りながら蹴って運んだんだ。ちなみに、そのスクールの名前は『サッカー校』といった。それが由来」
「そうか、サッカーはラグビーが起源……ためになった」
そのようなプレイ中の偶然の出来事から新たな競技が生まれ、オリジナルに引けをとらぬまでに広まるとは、感慨深いものである。あのドリブルし難そうな形状のラグビーボールを蹴って運ぼうとしたウィリアム少年の勇気を讃えたい。
深く頷いていると、何故かジョミーは、こちらに哀れっぽい目を向けていた。何だろう、そんなことも知らなかった僕の無知を哀れんでいるのだろうか。だが、新しい物事を知る喜びというのは、いつでも忘れたくないものだ。僕が読書を好む理由もそこにある。
確かに、僕はまだ何も知らない。けれど、何でも分かった風に余裕ぶって振る舞うジョミーの方が、むしろ可哀相なくらいだ。まるで、弱みを見せまいとする過剰防衛の塊のような──彼は、分からないといって、素直に教えを請える誰かがいるのだろうか? ──そんなこと、僕が心配する道理はないのだろうが、どうも危うげなところを感じてならない。
否。つい悲観思考を巡らせてしまった。出会ったばかりの、よく知りもしない少年に対して、こんな踏み込んだ内面を推し量るなど、いったいどうしたことだろう。おかしな気分を振り払うように、僕は続けて質問をした。
「それなら、ラグビーの起源は?」
「何でも他人に聞こうとするな。初心者だからって言いわけは通用しない。お前の目の前の箱は何だ」
「いきなりインターネット・コミュニケーション!?」
急にすごい壁を感じた!
ちょっと親密になったと思ったのに!
そして正確に言うならば、目の前にあるのは錆びて汚れた粗大ゴミみたいなゴミ箱だ。
「丁度いいや、ゴミ箱でも漁れば? 求めているものが見つかるかもよ」
「急に投げやりだな」
「そこのクズ、ゴミ箱を漁れ。これは相談ではない、命令だ!」
「えっ、こんな時にその決め台詞使っちゃうの!?」
何気なくクズと言われたのは気のせいだろうか。それもこれも、ラグビーの起源さえ知らない僕の無知加減がいけない……のだろう、きっと。
ジョミーは、「んー。なんだかなあ」と呟くと、改まった面持ちでこちらを見据えた。
「君さあ、他人を疑うってこと、知った方がいいと思うよ。そんなんじゃ、すぐ心を読まれてしまう。世の中、善良な人間ばかりじゃない。弄ばれた挙句にポイだよ」
「…………」
今まさに弄んでいる相手に言われても……。まあ忠告はありがたく受け取っておこう。
「だからなんで疑いもせずに、ありがたく受け取ってるんだよ。学習能力ないなあ」
「心を読むな!」
「あと女運が悪いね。まあ黒髪スーパーロングぱっつん前髪の悪女が理想のタイプという時点でかなり終わってるな。ダメダメだ」
「何のことだ!」
「あれ、金髪スーパーロングぱっつん前髪の悪女だったかな。まあどっちでも同じようなものか。このMめ」
「ものすごく受け容れ難い一文字を言われた気がする!」
「ちなみに僕のタイプは黒髪セミロングのエプロンが似合う人妻だ」
「黒髪同盟!? 意外なところで趣味が合う!」
意気投合した僕たちは、固く握手を交わしたのだった。
しかし、心が通じたのも束の間、手を離すなりジョミーは、「あ、うわぁ、嫌だなあ。キモい奴と手握っちゃったよ。また感動して泣かれたらどうしよう」と、悲愴な面持ちで己の手のひらを見つめるのだった。ここまで引っ張られると、さすがの僕も、一言、口にせずにはいられない。
「言わせて貰うが、そう僕を責められるのか。君だって泣いただろう」
人並みに礼節をわきまえる僕としては、指摘せずに流してやろうとも考えていたのだが──実際、ここのところは疑問に感じていた。僕が泣き、同じように彼も泣く。偶然の符合か、あるいは何らかの意味が隠れているのだろうか?
これまでの遣り取りで、ジョミーが相当にひねくれた性格であることが、嫌というほど知れているだけに──その彼が何故、あんなにも無防備に涙を落としたのか、不思議でならない。
「……ん、ああ。今日は特別。とても平静でいられないこと(があって、感情的になっていて──そういう時に、たまたま君と出くわした、それだけのこと。いつもこんな情緒不安定なわけじゃない」
てっきり、「目にゴミが入ってね。キースとかいう大きなゴミが」とでも言うのかと思ったが、返ってきたのは意外にも大人しい言葉だった。ふざけていない、彼の素の声を聞いたのは、これが初めてだった。
とても平静でいられないこと(──と言った。思わせぶりな傍点付きである以上、後ほど詳しいことを聞かずに済ますわけにはいかない。上がったり下がったり忙しい奴だと思ったが、まともでないことは自覚していたようだ。確かに、いつもこんなテンションでは身が持つまい。既に、相手をしている僕の方が半分以上、音を上げていたくらいだ。
「いつまでも泣き虫ジョミー(14)と思うなよ」
狙ったわけではないだろうが、五七調だった。低く呟き、こちらを睨めつける。目が怖い。真っ赤な血でも映しそうだ。
「僕の中に眠る戦士の血が目覚めたら、お前なんかひとひねりだ」
「僕の中に眠る国家元首の魂が目覚めたら、君なんてひとひねりだ」
負けじと胸を張った僕の態度がおかしかったのか、ジョミーは無邪気に笑った。
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